2009年10月
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◆2009年10月15日(Thu)◆
『永遠少年マガジン 2009年6月26日号』
三五館の星山社長から一冊の非売品小冊子をいただいた。
2008年5月30日、肺がんで亡くなられた元週刊少年マガジン編集長、内田勝氏の一周忌「内田勝氏を忍ぶ会」用に制作された「永遠少年マガジン 2009年6月26日号」である。

わずか24ページしかない「少年マガジン」だが、「週刊」や「月刊」ではなく「永遠」と冠されている。
これは講談社発行のモノではなく企画、編集が氏の晩年において携わっていたソニー・デジタル・エンタティメント・サービスと記されている。

本の表紙に「あしたのジョー」力石徹 葬儀の仕掛人!
「奇の発想」とは?!
一枚の絵は一万字にまさる!ビジュアル時代の先駆け!
内田勝流・大物の条件 1よく食べよく飲む 2声が大きい 3うそをつかない
と煽り文が踊っている。

非常に凝っている。
中身の内容は氏の生前、2008年1月16日にSONYの大会議場での講演のスピーチ内容をテキスト化したものを中心に、氏の略歴、大御所マンガ家先生たちによる寄せ書きになっている。

内田勝氏については以前2008年6月のブログに記したが、この講演文を読むとさらに内田氏という方がどういう人であったのかがより理解できる。
氏の好奇心の対象は宇宙にただようダークマターやクオークであったり、メーテルリンクの昆虫社会だったり、ボーボワールというフランスの女流作家であったり、紅白歌合戦とZARDの故・酒井泉水さんであったり、コンラート・ローレンツという初めて知るような動物行動学者だったり、ケインズだったりして実に多種多様にわたり、まったくジャンルにおいての好き嫌いが感じられないのである。

ここまで柔軟な思考力を70歳を越えて保ち続けられることは脅威である。
やはり氏は、類い稀なる好奇心の固まりで、その知識力は並の読書量では到底太刀打ちできる代物ではないことがわかる。
かなりマクロ的、客観的な視点をいつも貫き、いつの時代や世代をも冷静に観察されていて、その目は神の目のようですらある。

氏の少年マガジン編集長時代の読者層世代と次の世代である、氏の携わったホットドック・プレス世代、いわゆる少年ジャンプ世代間の違い、そのためのマーケッティング方法の違いを解き、さらにはそれらが統合されて出現したとして現在のネット社会を評されている。
氏の独創的で的確なメディア考察は、未来をいつも見据えていた。
時代がいつも後から追いついてくるようだ。

驚くべきは、この話が講演のスピーチであるということだ。
ぶっつけ本番、手元におかれた簡易なテキストを元にか、まったく何も無しで全てアドリブで話されているのである。
それにしては、まったく言葉に迷いがない。
もしかしたら文章化するときに校正されている可能性もあるが、それを引いても口頭文がそのまま活字として読めるほどに理路整然としてて完成されている。

この本を読んでいると、内田氏が今も遥かなる時空の隙間から現在の2009年末を俯瞰し、「ほーら、やっぱりボクの言った通りになったろう」という氏のしてやったりという表情をおもわず想像してしまうのだった。
やはり内田勝は天才編集者だった。

本の裏表紙に載っている氏の生前愛読した「この一冊に出会えた幸せ」と称された内田勝推薦本ベスト10を記しておこう。読書の秋です!
(私もぜひいつか読破したい!)
11あるのでメーテルリンクは別格扱いかも。

「蜜蜂の生活」
「蟻の生活」
「白蟻の生活」
モーリス・メーテルリンク

「カラマーゾフの兄弟」
フョードル・ドフトエフスキー

「白鯨」
ハーマン・メルビィル

「緑の影、白い鯨」
レイ・ブラッドベリ

「族長の秋」
「百年の孤独」
ガブリエル・ガルシア=マルケス

「虚空遍歴」
山本周五郎

「竜馬がゆく」
司馬遼太郎

「阿房列車」(第一〜第三)
内田百聞

「ドグラ・マグラ」
夢野久作

「暗闇坂の人食いの木」
島田荘司

「龍秘御天歌」
「八つの小鍋」(短編集)
村田喜代子




まつもと泉



 

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